赤澤康弘のご当地タイラバ戦術【玄界灘編:前編】プロが語る「どてら流しを制するコツ」とは
九州北西部に広がり、国内屈指の好漁場として知られる玄界灘。
中でもマダイの資源量は全国トップクラスといっても過言ではなく、一年を通じて大型が狙えるフィールドだ。
今回はシマノフィールドテスター・赤澤康弘さんが教える、「玄界灘のタイラバを制するコツ」を紹介していこう。
大鯛は広範囲を回遊する
今回お世話になったのは、福岡県伊崎漁港から出船している「マリブエクスプローラー 龍勢」の龍野船長。
玄界灘の大鯛が潜むポイントを知り尽くしており、九州のみならず全国各地にファンがいるほどの人気遊漁船だ。
赤澤さん自身も、本遊漁船で自己記録となる92cmのマダイを釣り上げた実績を持つ。
「大鯛は一箇所にとどまらず、広く回遊している傾向があります。瀬周りは数こそ出ますが、サイズがなかなか出ません。ですのでウチでは瀬周りではなく、とにかく潮の流れが効いているポイントを意識して狙っています。」
これまでに数々の大鯛との出会いをサポートしてきた龍野船長はこう語る。
一般的に瀬の周りを攻めることがタイラバのセオリーであるが、瀬に執着しないポイント選びこそが大鯛と出会うための秘訣だという。
また龍野船長は、タイラバゲームを末永く楽しむために積極的なリリースを推奨している。
このような資源保護に対する意識の高さも、玄界灘の豊かなフィールドが保たれている要因といえるだろう。
どてら流しを制するコツ
玄界灘では、潮流と風にまかせて船を流す「どてら流し」スタイルが基本となる。
どてら流しはマダイのヒットレンジを長く探れるだけではなく、広範囲のポイントへ効率よくアプローチできる攻め方だ。
つまり、広く回遊している玄界灘の大鯛と出会う上では最適な操船方法といえる。
「着底がわかる」の一歩先へ
タイラバはタッチアンドゴーが基本であり、着底後は遅くとも0.5秒以内に巻き始めることが望ましい。
しかしどてら流しではラインが斜めの角度で放出されるため、着底した感覚がわかりにくいという懸念点がある。
どてら流しを苦手とするアングラーは、戦略を組み立てる以前に着底を感じ取るだけで精一杯になってしまうだろう。
一般的にタイラバの着底がわからないときは、ヘッドの重量を上げたり、細いPEラインを使うなどして対処する。
「確かに着底が明確になれば釣りはしやすくなりますが、それが必ずしも釣果に直結するわけではありません。また過去の経験上、玄界灘では150g以上のヘッドを使うと極端に食いが悪くなる傾向があります。」と赤澤さんは語る。
赤澤さん曰く「着底がわかること」はもちろん大切であるが、どてら流しを制するコツはその一歩先にあるという。
ラインの角度をコントロールする
赤澤さんはどてら流しにおいて、ラインの角度を強く意識している。
「どてら流しにおいて、ラインの角度はとても重要です。糸をたくさん出した先で反応があれば、着底がわかるギリギリまでヘッドを軽くしてみましょう。船がほとんど流れていない状況であれば、軽くキャストして斜めの角度を作るのも有効な手です。」
「逆に投入直後など垂直に近い角度で魚の反応があるようであれば、なるべく真下に落ちていくようにヘッドの重量を上げてみましょう。また3〜4回底を取り直したら回収して投入し直すといった具合で、ピックアップまでのサイクルを短くするといいですよ。」
赤澤さんはこのようにラインの角度をコントロールすることで、その日のマダイがバイトしやすいパターンを探し出している。
ラインスラックを活用する
赤澤さんは海中のラインスラックを情報源として活用し、感じ取った変化に対して的確にアプローチしている。
「どてら流しではラインが斜めに入るほど角度が付きますが、潮の流れがあるポイントを通しているので、実際のラインは直線ではなく複雑な曲線を描いているでしょう。」
水深80mのポイントであれば表層、中層、ボトムの各レンジで潮の流れが違うため、複雑なラインスラックができているという。
「ラインスラックができることで、リーリング時に巻き抵抗の変化が生じます。例えば中層にベイトの反応があっても巻き抵抗が軽かった場合、潮が効いていないため上までは追ってこないだろうという判断ができる。また潮が効いているレンジは、巻き速度を遅くしてじっくり見せるといったアプローチができます。」
海中のラインスラックをネガティブなものと考えず、うまく活用することが釣果アップの秘訣であるという。
玄界灘に最適なタックルセッティング
どてら流しスタイルに適したタックルを赤澤さんに選んでもらった。
玄界灘では100〜120gを中心に、150g程度までのヘッドを使用できるロッドを選ぶ必要がある。
またリールはヒットパターンを数値化できるカウンター付きのベイトリールが有利だ。
タックルデータ
- ロッド:炎月エクスチューン B610M-S
- リール:オシアコンクエストCT 200PG
- ライン:タナトル8 / 1号
- リーダー:炎月 真鯛LEADER EXフロロ / 4号
こちらは玄界灘の大鯛に備えたパワー重視のタックルセッティング。
パワーだけではなく感度も優れており、250m以上ラインを出した先でも明確に着底を感じ取ることができた。
リールはパワフルな巻き上げ力を持つ「オシアコンクエスト200PG」を使用し、回収時の負担も軽減している。
オシアコンクエストCTは、フォールスピードを自在にコントロールできるフォールレバーを搭載。
速いフォールでリアクションバイトを誘ったり、着底前にじっくり見せるといった高度なアプローチが容易にできるようになった。
持ち前のパワーだけではなく、テクニカルなタイラバゲームを楽しめるリールだ。
- ロッド:炎月エクスチューン B511ML-FS
- リール:炎月プレミアム 150PG
- ライン:タナトル8 / 1号
- リーダー:炎月 真鯛LEADER EXフロロ / 4号
こちらはテクニカルなタイラバゲームを楽しめる、ショートレングスのフルソリッドモデル。
シャローエリアから水深80m程度の海域まで対応しており、1年を通じて幅広いフィールドで楽しむアングラーにおすすめしたい組み合わせだ。
バーチカルでの使用時はMAX100gまでであるが、ドテラ流しであればロッドへの負担が軽減されるため120g程度までは問題なく扱える。
炎月 エクスチューンのフルソリッドモデルは、ブランクスをX状に強化した「ハイパワーX フルソリッド」を採用。
柔軟な穂先と安定したリーリングが持ち味であり、どてら流し攻略の鍵となる潮流の変化を的確に捉えられる。
また細身のブランクスからは想像できないほどの粘り強さを持ち、大鯛や青物とのやりとりの際も全く不安を感じなかった。
どてらを制するものは玄界灘を制す
着底を感じ取るのが難しく、苦手意識を持たれがちな「どてら流し」。
好釣果を上げるアングラーは、着底の一歩先までを考えていることがわかっていただけただろうか。
本記事を参考にどてら流しの苦手意識を払拭し、テクニックを駆使して釣る楽しみを実感していただきたい。